スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Jazz Gala Concert /Peter Herbolzheimer

f:id:torinko:20201103173627j:plain

チック・コリアの名曲「Times Lie」をオーケストラバックに演奏。初演はあんなに長かったのにたった4分強の演奏。アルバート・デイリー時代には21分のテイクもあったくらいなのにね。

ここではニールス・ペデルセンのビートのきいたベースに乗ってゲッツが吹くんだけど、途中でコードが変わる辺りとか何か違う。ただのワンコードというか。ゲッツ自体はいい演奏なのに、アレンジが曲を理解していないというか。それはいつものことかもしれない。チック・コリア以外この曲をちゃんと演奏できる人はいないのでしょう。

あっという間にゲッツのソロが終わりテーマに戻るので、なんだったのかと思うほどあっけない。ただし、この演奏はある意味レアです。普段はピアニストをフィーチャーする曲なのにここではゲッツがメインになっているので。

この録音は一時期入手困難だったけど、いまはMP3ダウンロードで簡単に入手できるようになったんですね。昔、必死に探していたのが懐かしい。まあ、そんなに頑張って入手しなくてもいいテイクです。

 

Jazz Gala Concert

Jazz Gala Concert

  • アーティスト: Peter Herbolzheimer Rhythm Combination & Brass
  • 出版社/メーカー: Herbolzheimer Musik
  • 発売日: 2014/02/16
  • メディア: MP3 ダウンロード
  • この商品を含むブログを見る
 

Communications 72

f:id:torinko:20201103173611j:plain

とにかくすごいアルバム。言い尽くせない。ジャケットはよく見るとピアニストとサックス奏者ということがわかるけど、なんなのかな、芸術的というか。ミシェル・ルグランのオーケストラということで何かを期待すると想像を絶するほど裏切られます。

まずアルバム冒頭、ゲッツのアドリブフレーズ(だと思われる)に、微妙にユニゾンシャバダバスキャットがからみつく。多重録音なんでしょうね。とにかくこれが衝撃。アップテンポで、確かに技術的にはすごい。全編にコーラス隊が参加しており、あの迷作「Voices」を彷彿させる。

そして、私がトンデモゲッツのナンバーワンに推す、「Back To Bach」。日本の雑種混合読みなら「バック・トゥ・バッハ」、英語読みなら「バック・トゥ・バック」ですね。ネスカフェのテーマ「目覚め」のような、でもバッハ風(?)メロディのダバダバコーラスとゲッツが数小節ずつ前に出たり引っ込んだりで交代していくテイクで、ある意味ゲッツの新しい魅力を引き出しているといえるのか・・・楽しんで聴けます。しかし、これが「Captain Marvel」と同じ1972年に作られたとは信じられない。あ、すみません、正確には1971年の録音ですが、ヴァーヴのお家芸「録音年とタイトルは関係ない」が発動されていますので。「Captain Marvel」の約4か月前の録音です。

トンデモばかりでなく、例えば「Moods Of A Wanderer」は映画音楽そのままのような出来栄えだし、ラスト「Bonjour Tristesse」(悲しみよこんにちは)は憂鬱な思いをロックビートに乗せた名曲。さすがルグラン。とにかく飽きずに聴けるアルバムであることは確か。こんなアルバムなのに他のオーケストラものよりジャズ要素が強いのはなぜ?

それと、このアルバムはゲッツに珍しく変拍子をやっている。「Nursery Rhythmes For All God's Children」は4分の3と8分の3の組み合わせを基本によくわからないくらい目まぐるしく変わるし、「Soul Dance」は4分の3と4分の5の組み合わせ、「Moods Of A Wanderer」は4分の4で始まってソロは4分の3だったり。

とにかく、これはルグランのすごさを証明するアルバム。確かに時代による古臭さ、ダサさはあるのですが、ルグランがいかに才能あふれる音楽家か、これを聴けばわかるでしょう。管、弦、そして声を縦横無尽に活用したルグランのオーケストレーションがすごい。そのルグランがゲッツにインスピレーションを得て作ったアルバムです。

ちなみに、この「世紀のトンデモ盤」、プロデューサーはゲッツ本人らしいです。

 

Communications 72

Communications 72

 

Mad About The Boy /Cybill Shepherd

f:id:torinko:20201103173549j:plain

女優シビル・シェパードのボーカルアルバムだけど、とことんゲッツをフィーチャーしている。「ゲッツは歌伴がうまい」といわれているけど、間奏でのソロ以外で実際にゲッツの歌伴をあげられる人は少なかったりする。アストラッド・ジルベルトとの共演もオブリではなく間奏のみというのが多い。でも、このシビルのアルバムでは全編にわたってゲッツが歌伴を繰り広げる。

選曲がまた良い。アントニオ・カルロス・ジョビンの名曲「Triste」やスタンダードナンバーの「I Can't Get Started」「I'm Old Fashioned」「It Never Entered My Mind」、映画「シェルブールの雨傘」で歌われていた、知る人ぞ知る(なのかな)ミシェル・ルグランの「I'm Falling In Love Again」など。個人的には好きではない「This Masquerade」も人気曲、これをゲッツがイントロから吹くのだからレアである。

このアルバムは、アレンジがとにかく良い。なんとオスカル・カストロ・ネヴィス。「オスカー」ではないですよ。冒頭「Triste」のイントロからしてキャッチ―、1コーラス歌を入れたらあとはゲッツの独壇場という構成。「I Can't Get Started」は、ヴァースを歌ったあとにコーラスがゲッツによるインスト、そしてかっこいいエンディング。「Speak Low」でリズムが変わるところもゾクッとするし、「I'm Falling In Love Again」で歌声を伸ばしたところにゲッツが重なる瞬間とか、とにかく歌とゲッツのからみがすばらしい。

 

ついでにいうと、「This masquerade」も収録されています。ゲッツがこれを演奏するとは。なんとこのアルバムの録音はジョージ・ベンソンの同曲の録音と同じ年なんですよ。

 

Mad About the Boy
Mad About the Boy