スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Moonlight In Vermont /Johnny Smith

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ゲッツ参加で有名だけど、ゲッツ目当てで買うととんでもなく後悔することになる。CDによって違うけど、オリジナルアルバムの曲順をまるっきり無視した、真ん中にCD追加曲を突っ込んだ構成にも我慢できない。

 

ゲッツは別テイク含めて9曲だけ参加してるけど、とにかくソロが短い。1曲目なんて8小節だけ。タイトル曲でも6小節のみのソロで、始まったと思ったらすぐ終わる。そもそもジョニー・スミスのリーダー作だからそれは納得できるんだけど、ジャケットや評判でイメージするほどゲッツの存在感はない。「ゲッツ参加ゆえの名盤」だなんて誰が最初に言い出したのか。だけど、このテイクは「バカ売れ」したそうで、これによりノーマン・グランツがゲッツに目を付けてヴァーヴとの契約につながったのだそう。

ゲッツ目当てでなければ、どの曲も単なるブローイングでなくアレンジやセカンドリフを加え手が込んでいるテイクばかりで楽しめる。「stars fell on Alabama」は例の32分音符でのアプローチが聴ける。

 

このアルバムの最大のポイントは、ズート・シムズとゲッツの区別がつかないことwマニアを自認する身として恥ずかしいのだが、正直なところ。

パーソネルのデータを知って聴いているからいいものの、わからず聴いているとホントにそっくり。もう少し時代が下るとゲッツもズートも少しずつ変わってきて違いがわかるようになるんだけど。

 

Moonlight In Vermont

Moonlight In Vermont

 

Woody Herman Story

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ウディ・ハーマンの4枚組CDボックス。全91曲のうちゲッツ参加は17曲程度。かつ、「Blowin Up a Storm: The Columbia Years」や「Complete 1948-1950 Capitol Session」などと重なる音源が多く、重複していないのは5曲だけ。たいていのゲッツファンはこれらを持っているから、いまさらハーマン時代は聴かなくていい、5曲なんてどうでもいいやと思ってしまうかもしれない。

 

しかし当然、マニアならその5曲のために買うものでしょう。それでこそマニア。そうはいってもこの時代のフォー・ブラザーズだから、ゲッツなのか誰なのかわからないソロとかがあって、とりあえず持っているだけで満足というものにならざるを得ない。明らかにゲッツらしいのはわかるんだけど、微妙なソロも多いんですよね。

なお、5曲というのは「Cherokee Canion」(ディスク3収録)「I've Got News For You」「Keen And Perchy」「The Goof And I」「Lazy Lullaby」(ディスク4収録)です。

Woody Herman Story

Woody Herman Story

 

Soul Eyes

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つぶれた写真のトホホさにつられてはいけない。大名盤である。1989年の6月29日ライブと7月27日ライブを収録。

聴き飽きているはずの「Voyage」「Blood Count」もやはり何度聴いてもすばらしい。単なるスローブルースなのにどうして盛り上がるのかわからない「Stan’s Blues」も、やっぱりエキサイトしてしまう。聴衆も怒涛の拍手。こんなやる気のないブルースが、なぜ。それだけゲッツの演奏がすばらしいということ。

ケニー・バロンのオリジナル「Feijada」もリラックスしていていい演奏。 とにかく80年代ゲッツははずれなし。

有名スタンダードの「On A Slow Boat To China」を聴けるのはこれともう1枚、「Final Concert Recording」だけ。ここでの演奏は神がかっているといっても過言ではない。この曲はゲッツに演奏されるために存在するのではないかと思えるほど。

 そしてこのアルバムの白眉は、あの「Warm Valley」。傑作エリントンナンバーをゲッツが1ホーンで披露します。すばらしすぎる。私が最も好きなエリントンナンバーがこれと、「Don't You Know I Care」です。後者はゲッツの演奏記録はありませんけど。とにかく、ゲッツが「Warm Valley」を演奏してくれるとは。感動です。バラードではありますが、リラックスして聴くというより、一音たりとも聴き逃がせない緊張感を持っています。

 ラスト「Hush-A-Bye」は、ゲッツは原曲とは違うメロディを演奏する。「People Time」でもそうだったよね。私も見習って、自分が演奏するときはこっちのリフにしています。この、少し遅めのテンポと静かさが、アルバムをビシッと締めます。前の、スローからの流れが、ワンパターンでなくライブそのものを引き締めている感じがしますね。演奏順は本当はこのとおりじゃないのだろうけど。

 

Soul Eyes

Soul Eyes