スタン・ゲッツを聴く

スタン・ゲッツ ファンが勝手なことをいっているブログです。

Stan Getz In Denmark

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日本人は、欧州、特に北欧の地理に詳しくないので、ノルウェーのライブもスウェーデンのライブも、ポーランドもスイスもオランダも、そしてこのデンマークのライブ録音も混同してしまいがち。特にゲッツがこの時期北欧に住んでいて、各地でのライブ音源がたくさん発掘されているから、どれがどこのライブかまったく頭に入らない。ついでに言うと、コペンハーゲンとかストックホルムとかオスロとかチューリッヒのライブとか言われてもどの国なのかわからない時期もありました。ゲッツファンはまずコペンハーゲンストックホルムを覚えるんですけどね。


このデンマークの録音ですが、ゲッツの音源の中で2番目か3番目くらいに多くブートとして出回っているのが、冒頭3曲のオスカー・ペティフォードとのセッション。1曲目はペティフォードのソロのみでゲッツの出番はテーマだけなんだけど、ペティフォードがすごすぎて、まったく不満はない。

「 I Remember Clifford」は90年代と相変わらず(いや、逆ですね)同じアプローチ、同じエンディング。こういうのを聴いていると、ワンパターンな自分の演奏にも少し安心できる。

 

レアなトラックもいくつかある。他のブート盤でも聴けるけど、「Cherokee」は手の込んだアレンジが興味深い。しっかりアレンジしているくせに原曲のメロディが出てこないのがおもしろい。ていうか、ゲッツはこの曲相当演奏しているけどまともに原曲メロディを吹いたことがほとんどない。飛ばしすぎず適度なテンポで軽やかに演奏しているので、いつもとアプローチが違って新鮮、すぐ終わってしまうのが残念。

逆に「My Funny Valentine」は珍しくテーマメロディをしっかり吹いているので、原曲の駄曲さがよくわかるw これはマイルス・デイビスみたいにムードだけさらって原曲からできるだけ離れた方がいい曲だと思います。

「Rain」という、知らない曲が入ってるんだけど、スイング時代のようなオーケストラのアレンジがなんだか心地よい。

 

全体的に音質はいかにもエアチェックだけど、そのエアチェックらしさがいい感じを出している。ラストの「Lester Leaps In」ではこの頃お気に入りのストップタイムも聴けます。

個人的にはかなり好きなアルバム。「この頃の欧州ライブ音源って、どれも同じだよなあ」と思っている人がいたら、言わせてください。「どれも同じ」ではありません。同じ音源が重複してるからそう思うのであって、重複を除けば1つ1つどれも違って素晴らしいですよ。ただ、いくつも買ってると、これはあのアルバムにも入っていてこれはそのアルバムにも入っていて、なんてことで、1曲以外すでに持っているということもあるんですよね。

Stan Getz in Denmark

Stan Getz in Denmark

 

Sittin' In

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ノーマン・グランツのテキトーさがよく表れたアルバム。テナー3人のバトルにするのはいいけど、そこにディジー・ガレスピーも追加してしまったから単なる寄せ集めの印象が強くなってしまった。個人的にはガレスピーは好きだからいいけど、当初はレアだったゲッツとの共演もこの頃は食傷気味ですよね。

加えて、バラードメドレー2曲とアップテンポ2曲という、何も考えていないような構成。かなりその場の勢いだけで作ったという感じ。

私はゲッツファンだから当然ゲッツがもっともいいプレイをしていると思うんですけど、我慢できないのがコールマン・ホーキンスアーティキュレーションがめちゃくちゃでタンギングがまともにできていない。アップテンポの曲ではそれもあってふにゃふにゃした演奏になっている。実際ヨレているところもあり、いただけない。

じゃあバラードならいいかというと、長い音符がなくフレーズすべてにブツ切り感、物足りなさが残る。昔はすごかったのかもしれないけどこの頃はとても聴いていられない。ちなみにレスター・ヤングも50年代以降のプレイは情けなくなるものしかない。

アナログB面のバラードメドレーはフツーにミディアムテンポで、まったくバラードじゃないw それもあって、いつものバラードメドレーと違い1人2コーラスも吹いている!

ラストの「The Way You Look Tonight」ではポール・ゴンザルベスが迷子になっている。こういうのをそのまま発表するところがジャズの素晴らしさだけど、私だったら恥ずかしくて録りなおしさせてもらうでしょう。

シッティン・イン

シッティン・イン

 

Cool Mix

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ボブ・ブルックマイヤーとのセッションをいくつか集めたオムニバス。もともとは10インチ盤「 Interpretations By The Stan Getz Quintet 」の1と2で発表されたものなども入っている。

そのあと編集された「Stan Getz '57」も、今でこそ簡単に入手できるものの昔はLPしかなかった。でもここには同アルバムから「Minor Blues」「Pot Luck」が収録されている。

 

このCDのポイントはコンピレーションの「The Complete 1952-1954 Small Group Sessions Vol.1」からの3曲だろう。特に「Cool Mix」はジャズ批評で西條孝之介氏の話にも登場しているので興味深いと思う人も多いはず。

ところがこの「Cool Mix」が全然おもしろくない。Bメロのブリッジがスムーズじゃない気がする。さらに「Erudition」もダメ。ついでにいうと上述「Minor Blues」も駄曲。これらはすべてブルックマイヤーの作曲。普段はいい曲を書く人なのに、どうなってるのかな。曲がわるいとソロもなんとなく乗っていないように思えてくる。西條氏が言うほどにははまらない演奏です。

Cool Mix

Cool Mix