87年のライブ。ジャケットの写真はゲッツが最後に愛した女性、サマンサ・セセーニャ。このアルバムの収録にもれたのが後年「Serenity」として発表されるんだけど、どちらも文句ない内容。
こっちは1曲をのぞいてバラードとミディアムテンポ。どの演奏も神憑っていて、吸い込まれるよう。バラードの美しさなんか他の追随を許さない。唯一のアップテンポがラスト前の「What Is This Things Called Love?」で、アルバムのクライマックス。普通のスタンダードをこんなに盛り上げることができるのはさすが。どの曲もゲッツと、そしてケニー・バロンが光っている。
このアルバム、当初日本盤は「星影のステラ」という邦題で発売された。スタンダード至上主義の納得いかないマーケティングだなあと思っていたんだけど、実際に「Stella By Stalight」を聴いてみるとテンションという細い糸を綱渡りしたようなフレーズが星降る夜空の如くキラキラと輝き、「Stan Getz Plays」での奇跡とはまったく違うもう1つの奇跡が起こったことに気づきます。ほかの曲も抜群に良く、ゲッツはカフェ・モンマルトルと相性が良かったということに納得させられます。
真ん中に位置する「I Thought About You」はCD追加曲なんだそうだけど、あまりにもいい出来で、美の極地とも言えるバラード演奏。これだったら「Blood Count」をオリジナルレコードからはずしたほうが良かったんじゃないのかなと思う。
ところで「Blood Count」はビリー・ストレイホーンが最後に発表した曲だそうです。後年のゲッツはこの曲を気にいっていたようでいろんな録音が残っているけど、70年代にはストレイホーンの実質的デビュー曲「Lush Life」を何度も演奏していた。おもしろい因果を感じるというか何か秘めたストーリーがありそうな事実です。
このライブは映像作品も発表されているので、ぜひそちらもお薦めします。
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